土地建物を公共事業のために売却

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土地収用

 土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。2つの特例がありますのでご紹介します。

 

[目次]
1.対価補償金等で他の土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例
2.譲渡所得から最高 5000万円までの特別控除を差し引く特例
3.収用等により取得する各種補償金の所得区分

 

1.対価補償金等で他の土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例

 この特例を収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例といいます。この特例を受けると、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税が将来に繰り延べられ、売った年については譲渡所得がなかったものとされます。 売った金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。
 この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。

(1)売った土地建物は固定資産であること。不動産業者などが販売目的で所有している土地建物は、固定資産にはなりません。

(2)原則として、売った資産と同じ種類の資産を買い換えること。
 同じ種類とは、例えば土地と土地、建物と建物のことです。このほか、 一組の資産として買い換える方法や事業用の資産を買い換える方法などが あります。

(3)原則として、土地建物の収用等のあった日から2年以内に代わりの資産を取得すること。

2.譲渡所得から最高 5000万円までの特別控除を差し引く特例

この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。

(1)売った土地建物は固定資産であること。

(2)その年に公共事業のために売った資産の全部について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと。

(3)買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っていること。

(4)公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続又は遺贈により当該資産を取得した者を含みます。)が譲渡していること。

 この特別控除の特例は、同じ公共事業で2年以上にまたがって資産を売るときは最初の年だけしか受けられません。公共事業のために土地建物を売った場合は、これらの2つの特例のうち、どちらか一方の特例を受けることができます。

 確定申告書には公共事業の施行者から受けた公共事業用資産の買取り等の申出証明書や買取り等の証明書など一定の書類を付けることが必要です。

3.収用等により取得する各種補償金の所得区分

 個人が土地等を収用等されることにより取得する補償金には、いろいろな名目の補償金がありますが、これらの補償金は課税上、次のように分類されます。

・収用等された資産の対価となる補償金:対価補償金
・資産を収用等されることによって生ずる事業の減収や損失の補てんに充てられるものとして交付される補償金:収益補償金
・事業上の費用の補てんに充てるものとして交付される補償金:経費補償金
・資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付される補償金:移転補償金
・原状回復費、協力料などの補償金:その他の補償金

これらの補償金のうち収用等の課税の特例の適用がある補償金は、原則として、対価補償金だけですが、課税上の取扱いは、次表のとおりです。

保証金の種類 課税上の取扱い
対価補償金 譲渡所得の金額又は山林所得の金額の計算上、収用等の場合の課税の特例の適用があります
収益補償金  その補償金の交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。
ただし、建物の収用等を受けた場合で建物の対価補償金がその建物の再取得価額に満たないときは、収益補償金のうちその満たない部分を対価補償金として取り扱うことができます。
経費補償金

(イ) 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金は、その補償金の交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。
(ロ) 収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産(たな卸資産を除きます。)について実現した損失の補填に充てるものとして交付をうける補償金は、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に参入します。
ただし、事業を廃止する場合等でその事業の機械装置等を他に転用できないときに交付を受ける経費補償金は、対価補償金として取り扱うことができます。

移転補償金 その交付の目的に従って支出した場合は、その支出した額については各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入されません。その交付の目的に従って支出されなかった場合又は支出後に補償金が残った場合は、一時所得の金額の計算上、総所得金額に算入されます。
ただし、建物等を引き家又は移築するための補償金を受けた場合で実際にはその建物等を取り壊したとき及び移設困難な機械装置の補償金を受けたときは、対価補償金として取り扱うことができます。
また、借家人補償金は、対価補償金とみなして取り扱われます。
その他対価補償金の実質を有しない補償金  その実態に応じ、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。 ただし、改葬料や精神的補償など所得税法上の非課税に当たるものは課税されません。

 

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