譲渡所得と確定申告について

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譲渡所得と確定申告

不動産を売買した場合の譲渡所得と確定申告について説明します。譲渡所得税は譲渡所得に対しての税金ですので、譲渡した結果利益がない場合は申告する必要はありませんが、確定申告を怠るとペナルティもありますので確定申告のポイントを理解してください。

 

[目次]
1.不動産の譲渡所得とは
2.資産の「譲渡」とは
3.課税方法
4.譲渡所得の申告期限
5.確定申告が必要なときに怠った場合のペナルテ

 

1.不動産の譲渡所得とは

 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。不動産に関する譲渡所得になる資産は、土地、借地権、建物です。

2.資産の「譲渡」とは

 譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為です。通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。また、次の場合にも資産の譲渡があったものとして課税されます。 

(1)法人に対して資産を贈与した場合や限定承認による相続などがあった場合

次のイ又はロのような事由により資産の移転があった場合には、時価(通常売買される価額をいいます。以下同じ。)で資産の譲渡があったものとして、課税されます。

イ 法人に対する贈与や遺贈、時価の2分の1未満の価額による譲渡
ロ 限定承認の相続や限定承認の包括遺贈(個人に対するものに限られます。)

(2)地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合

建物や構築物を所有するための地上権や賃借権(以下「借地権」といいます。)の設定などにより受ける権利金などについても、その金額が借地権の設定された土地の時価の2分の1(地下又は空間について上下の範囲を定めたものである場合等は4分の1)を超える場合には、譲渡所得として課税されます。

(3)資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合

収用などにより、借地権などの資産が消滅したり、その価値が減少することにより一時に補償金などを受け取ったときは、その補償金などは譲渡所得として課税されます。

3.課税方法

 土地(借地権等の土地の上に存する権利を含みます。)及び建物等は分離課税です。土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。

4.譲渡所得の申告期限

 譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います。 なお、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例などの適用を受けることにより所得税の還付申告となる場合は、2月15日以前でも申告をすることができます。

4−1.資産の「譲渡の日」とは

 資産を譲渡した日は、原則として、売買など譲渡契約に基づいて資産を買主などに引き渡した日をいいます。 が、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。つまり、契約の効力発生の日とは一般的には契約締結の日です。

4−2.譲渡した人が出国又は死亡した場合の申告期限

 譲渡した人が出国する場合や死亡した場合の譲渡所得の申告期限は、次の対応が必要になります。

(出国する場合)
 譲渡した人が出国する場合には、原則として、出国の時までに確定申告書を提出しなければなりません。 

(死亡した場合)
 譲渡した人が死亡した場合には、その相続人は、その相続開始のあったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、被相続人の譲渡所得について確定申告をしなければなりません。

相続人が死亡した人が売却したことまで把握して確定申告するとなると、同居しているとそれも把握しやすいですが、そうでないと申告漏れということになりがちなので注意が必要です。

5.確定申告が必要なときに怠った場合のペナルティ

理由に関わらず、3月15日の期限までに申告や納税をしないと延滞税や無申告加算税などが課されることがあります。重い税がかかるケースもあるので注意が必要です。

その1:無申告加算税が発生するケース

 無申告加算税は、確定申告の申告書を3月15日の期限内に提出しない場合に課せられる罰則的税金です。税務署から調査を受けてから期限後に申告、または申告をしなかったために税務署から所得総額の決定を受けた場合、納めるべき税金に加えて無申告加算税を払うことになります。
 無申告加算税は、納めた税金の金額が50万円までは15%、50万円以上の場合は20%を上乗せされますが、税務署から調査を受ける前に期限後申告を自主的に行った、あるいは正当な理由がある場合は5%の割合に軽減されることもあります。なお、確定申告の提出期限を過ぎてしまった場合は、期限から2週間以内に自主的に申告、または納付すべき税額の全額を法定納期限までに納めていれば0%になることがありますが、早めに準備をして必ず期限に遅れないようにしましょう。

その2:延滞税が発生するケース

 確定申告の期限である3月15日は支払うべき税金を納める期限でもあります。この期限までに完納しない場合に課せられる罰則的税金が延滞税です。定められた納付期限の翌日から納付するまでの日数に対する本税を対象とした利息分が延滞税として課されます。
 延滞税の税率は毎年異なり、納付期限まで、または納付期限の翌日から2か月が過ぎるまでは、その年度の法定税率に特例基準割合(※1)か1%のどちらか低い方を乗じて算出します。それ以外の期間は、法定税率に特例基準割合か7.3%の低い方を乗じて算出します。いずれにしても納税が遅延することにより利子まで支払うことになりますので早めに納税しましょう。

※特例基準割合は、前年の銀行における新規の短期貸出約定平均金利に年1%分を加算して算出されます。

その3:故意に申告書を提出しない「ほ脱」

 ほ脱とは、納税の義務がある者が不正な手段によって各種の納税義務を免(まぬが)れることをといい、重大な犯罪です。悪質な納税者の刑事責任を追及するために「故意の申告書未提出によるほ脱犯」が創設されました。無申告が発覚し、かつ故意に納税を免れる意思があった場合、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、その両方が併科されます。この法律は所得税だけではなく、贈与税や相続税、法人税などの税法にも適用されます。また、単純無申告で故意に税金を免れる意思がなくても、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が課せられることがあるので注意が必要です。

6.まとめ

 譲渡所得税は譲渡所得に対しての税金ですので、譲渡した結果利益がない場合は申告する必要はありません。譲渡所得があり、特別措置を利用した結果税金がゼロになる場合は、確定申告をする必要があります。つまり、延滞税は発生しませんが、無申告加算税が課せられる場合がありますので注意が必要です。不動産を売買した場合は、不動産会社、会計士、税理士に相談し、確定申告が必要な場合は忘れずに申告しましょう。

 

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