税制改正【住宅資金贈与の非課税措置】

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資金贈与

 いまから住宅を購入しようとする人が、親や祖父母からの資金援助を受ける際に使える制度です。通常であれば、まとまった額の現金を一括してもらってしまうと、もらったお金に対して、下手をすれば数十パーセントもの税率で莫大な贈与税が課せられることになります。しかし、いくつかの条件を満たしてきちんと申告すれば、親などから住宅取得等の資金を援助してもらっても一定額までは非課税で済むというのがこの制度の趣旨です。  


 2014年末までは上限1000万円(省エネ住宅の場合)でしたが、今年は上限が1500万円と一気に「5割増し」になりました。16年前半(1~9月)は上限1200万円と枠が少し減少するものの、もし消費税が10%に増税されることが決まれば、16年10月以降の非課税枠は最大3000万円まで大きく拡大することになっています。 この枠をうまく使えば、若い世代でも自己負担の心配を減らして住宅を購入できるようになります。多額の贈与を非課税で受けられるというのが、これが制度の最大のメリットです。
 ただし、それはあくまで「入り口」の話。住宅資金をもらってすぐとか、住宅を購入してすぐに不利なことはありませんが、将来の相続という「出口」を考えると、喜んでばかりもいられないケースが出てくる点には注意です。
 たとえば親から1500万円の住宅取得資金をもらったとします。それが親の持つ資産の大半を占めていたとしたらどうなるでしょうか。親が生きている間は非難されることがなかったとしても、親の死後にトラブルとなる可能性があります。他の相続人からすれば「遺産はこれだけしか残っていないのに、なんであいつだけが生前に1500万円もの大金をもらってるんだ!」としか見えないかもしれないのです。納得しない相続人が出てきてもおかしくありません。
 また、住宅資金の贈与を受けて持ち家を所有すると、相続の際に適用されるいくつかの特典が使えなくなります。生前に援助してもらったほうがよいのか、死後の相続で特典を受けるほうがよいのか、トータルで検討してからでないと、結果的に不利となる可能性があることを知っておくべきでしょう。
 次に、新設された結婚・子育て資金の贈与についての非課税措置です。これは、結婚や出産、育児など何かとお金がかかるのに備えて、今のうちに親や祖父母から資金援助を受けておくという場合に使える制度です。 非課税の限度となる額は1000万円で、このうち結婚資金に使えるのは300万円まで。まずは信託銀行などの金融機関などで所定の手続きをして、お金を受け取る側となる子や孫の口座を作ります。そこに一括で資金を預け入れて金融機関に管理してもらい、子や孫が結婚や子育てにお金を使うたびに払い出ししてもらうという仕組みです。
 実を言うと、扶養関係にある親族などに、必要となるごとに常識の範囲内でのお金を援助する程度であれば、いままでも贈与税はかかりませんでした。今回決まった制度は、それらの「先取り」を確約するような趣旨のものだといえます。 もらった資金の使いみちもかなり広範囲に設定されており、挙式費用はもとより、新居の住居費や引っ越し費用、不妊治療費、出産や産後ケアの費用、子どもの医療費や保育費、ベビーシッター費用なども含まれることになっています。これらの資金に不安があり、いまのうちに援助金を確保しておきたいという新婚世代、子育て世代などにはメリットを感じやすい制度でしょう。
 ただし、ここでもやはり「入り口」と「出口」の把握が欠かせません。この結婚・子育て資金の制度は、あげて終わり、もらって終わりという単純な制度ではなく、一定期間が経過した後に使い残しているお金があれば、その残額に対して贈与税がかかります。また、相続税を回避するために子どもや孫に次々と贈与をして遺産額を減らすという行為を防ぐために、贈与した人が死亡した時点で残額があれば、それは相続税の課税対象となることも決まっています。
 さらに、「なんであいつだけ!」の問題はここでも発生します。シングル層や子どもを持たない層にとっては、結婚・子育て資金といわれてもニーズを感じないケースも少なくありません。
 一方で、子どものいる相続人だけ手厚く贈与を受けるとなると、全体的にバランスを欠いてトラブルとなるケースも出てくるため注意が必要です。 まあ、私のように両親が贈与できるような家庭でない場合はまったく関係ない税制改革です(涙)。
 自分のポリシーから言っても、両親から資産贈与すると言われるまでは自分で努力しますが、確かに、贈与があれば生活が楽になることもあるのでしょうね。 どれだけの方がこの制度を活用できるのでしょうか。

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